カロリーラヴァーズ。

パティスリー・シャンドワゾーでお買い物をして、梱包待ちの時のことである。

先に買い物を終えたご年配の男性が、店員さんへ質問をした。
「すみません、これらのケーキって、何カロリーくらいですか?」

ケーキ屋さんで、カロリー聞くとは!!!
思わず、わたくしは、のけぞりそうになった。
しかし、人にはそれぞれ事情というものがあり、食餌制限などをしなければならない人もいる。
のけぞりそうな自分を戒め、直立姿勢を保った。
待つこと数分。
厨房からメモを手にしたパティシエが現れ、「こちらは100gにつき〇カロリーとなります。このケーキの重さを測ったところ、一つにつき約〇gでしたのでカロリーは………」と男性に丁寧に回答をし始めた。
想像するに、パティシエは、この数分間でラ・カンパネラのピアノ演奏のごとく、電卓を叩いて、カロリーを割り出したに違いない。
ケーキの製造は分量や濃度など細かい計算が必要とはいえ、突然のカロリー計算にこたえるパティシエ。
実にかっこいいではいか!

梱包されたケーキはイートインではなく家へ持ち帰った。

タルト・フリュイ・ノワール

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ナガノパープル、ブラックベリー・ブルーベリーを盛った黒いフルーツタルト。
タルト・フリュイ・ルージュがルビーの輝きならば、こちらは黒曜石の輝きと言えよう。
黒い輝きは瞬く間に、我が腹中に収まった。
うっとりと秋の味覚の余韻を味わう、わたくし。
やはりケーキは素晴らしいのである。

 

美味しいものはカロリーが高い。
カロリーは魅力的な恋人のようなものだと思う。
摂りすぎると身の破滅だけれど、無きゃ無いで、物足りない。
カロリーとの上手な付き合いは、「自分を知る」ことではないだろうか。
日々の自分の摂取カロリーをふまえて、とっておきのアバンチュールに、高カロリーをいただく。
このコントロールができれば「溺れる」ことはない。
………理論上は、だが。

 

パティスリーのショーケースが模様替えをはじめている。
秋の逢瀬はこれからが本番。
汝、カロリーを愛でよ。