函館の街には、縁もゆかりもない。
漫画や映画、ドラマで眺める、フィクションの街だった。
その街に、いま自分は来ている。
フィクションの世界に、うっかりまぎれ込んでしまったような、そんな気分である。
とりあえず、函館駅の観光案内所へ立ち寄った。
スマホでいくらでも観光情報を得られる時代だが、地元で生活している人から直接うかがうのが好きなのだ。
行きたい場所や食べたいものをざっと伝え、効率的にまわれるプランやお得な情報を教えてもらった。
お礼を言って去ろうとすると、マスクと除菌ティッシュをいただいた。
マスク、除菌ティッシュはこの旅のため、かなりの量を持ってきたが、お心遣いがありがたかった。
夕方から夜のプラン。
函館山の夜景、八幡坂、函館ハリストス正教会を、この目で見に行く。
路面電車に乗り「十字街」へ。
十字街。
十字路にあるから十字街駅なのだろうか。それとも教会が多いので「十字架」とかかって十字街なのか。後者は深読みな気がする。
ロープウェイ乗り場は坂の上にあり、十字街駅からけっこう歩く。
乗り場に、人だかりがあった。
やや小柄な人間の団体客・・・・・・・・・小学生の修学旅行だ!
小学生御一行様を先に山頂へ送り、一般客は後からロープウェイに乗る。
出発!
ロープウェイから見える函館の夜景。
うわー!写真投稿サイトで観た、あの光景だ!!
夢中でシャッターを押した。
カメラ手持ち撮影なのでブレるのは承知。数撮ればどれか一枚はピントが合うだろう。
山頂は、控えめに言って、小学校の大運動会状態であった。
ロマンチックエナジーチャージ*1を求めた恋人・パートナー同士の方々にとっては、想定外の事態だった思うが、自分としてはこれも一つの思い出として面白かった。
100点だったらいいなあと思うけれど、100点でなくてもいいのだ。
とはいえ、雲で下界が見えないのである。
たまーに風の加減によって、うっすらと夜景が浮かぶが、それもほんの数秒である。
サイレントヒル状態で面白かったので、夜景ではない写真も撮りまくるワタクシ。
修学旅行生たちはまだまだ山頂で過ごされるようだったので、先に下山して、八幡坂を見に行った。
八幡坂
名前は知らなくても、映画やCMなどで、一度は見たことある坂だと思う。
フィクションだったあの光景が目の前にある。
この足で立っている。
自分の体を基準に感じる高さ、幅のサイズ感。
画角には映っていなかった、知らない端っこの光景があることを知った。
現実感がわかない。そもそも現実感とはなんぞや。
夢は焦がれている時こそが、リアルなのかもしれない。
八幡坂のすぐそば、函館ハリストス正教会へ。
現在修復中で、聖堂の中には入れないが、敷地内には入ることができる。
闇に浮かぶ、ロシア正教の十字架「八端十字」
静寂に包まれた瞬間、ボロボロと涙が出てきた。
納得できなかった出来事へのくやしさ、地に落ちた自分の信頼、味方のいない世界。
昔のいろいろな傷までもが、次から次へと沸き上がってきた。
「これでよかったんだ」と噓をついてきた。
どんな感情でも、ごまかさず感じきらなければ、それは自分を欺いていることになる。
これからは欺かない。それが聖でも俗であっても。
感じるきるだけ感じきって、生きていこう。
再び、ギヒャギヒャ音を立てる路面電車の乗って、函館駅へ戻った。
ウニをミニ丼にしたので、空腹というわけではないが、お腹にまだキャパがある状態だ。
函館で有名なハンバーガーチェーンーン店、ラッキーピエロの「チャイニーズチキンバーガー」を購入してみた。
これが、予想以上に美味しかった!!
甘じょっぱい揚げチキンにマヨソースが、ふわふわのパンズとも相性がいい。
これで350円!!
ラッピー最高!!
さっき泣いてたワタクシですが、ラッキーピエロで復活するという、なんとも単純というか。
お腹いっぱいになり、二つのベッドに横断するように寝っ転がった。
ロシア正教の礼拝ではイイスス(イエス)の身体として作られたパンをわかちあい、食べる。
古事記では、黄泉の国に迎えに来た夫のイザナギに、妻のイザナミは「黄泉国の食べ物を食べてしまったので戻れない」と言った。
食べるということは、自分ではない他者を、外界を、自身の血肉として定着させることだ。
その土地のものを食べるということは、その土地を受け入れることでもある。
自分がフィクションに迷い込んだのではない。
街が自分の現実になったのだ。
この日は7月7日。夢や願いを星にゆだねる日。
自分の夢は、かなった。
おまけ
お風呂は天然温泉!
雰囲気もレトロで素敵であった。
やはりこのホテルを選んでよかった…。
実際のお風呂はもっと薄暗くて秘境の温泉っぽい感じでした。
さらに脱衣所には無料アイスサービスあり。