火中の栗でモンブラン

現在、浦和エキナカ催事店舗*1にて、シャンドワゾーの今期モンブランの先行販売があると聞き、浦和へ寄った。
今秋初モンブランである。

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筋金入りの臆病なくせに、火中の栗を拾いに行くような、あぶなっかしいことをする。
ひと月の間、ロシアの大学主催のオンライン授業を受けた。
実に、身のほどをしらないことをしたものである。
授業を終えて、一息ついたので、感想を書く。

2年前の超短期留学後、まとまった学習時間を取れず、日に日にロシア語を忘れてきている。
焦りを感じているとき、ツイッター上にてロシアの大学で、一か月間無料オンライン講義をやるという告知を見た。
授業料は無料。
そして今年から「年齢制限なし」*2
時差のため講義は平日夜という。
ならば、日本で仕事をしながらでも続けられる。
これはチャンスだと思い、ダメもとで書類を送ったら申請が通った。
通った本人がびっくりである。この年でいいんかい?
審査に落ちた人もいるらしいから、運営側に「授業うけさせていいか」というお許しは出たわけだ。


オンライン講義。募集は日本全国区。
授業初日にあてがわれたクラスは、皆が知る有名大学に通う大学生たちが占めていた。
つい最近、受験戦争を勝ち抜いたピッチピチの脳ミソをお持ちの方々だ。
自分のロシア語は、初心者に毛が生えたくらいである。
専門家からの教育をうけたこともないし*3、ロシア語にかすりもしない仕事をし、学生さんたちのオトーサンオカーサンに近いお年頃だ。
案の定、数日で「しんどい、ついていけない」と思った。
学校も「クラスを移動したいと思ったら申し出てください」と言っている。(上のレベル・下のレベル双方移動可能)
老体に無理は禁物☆下のクラスにいこう!
そう半ば決めかけていた時、どこからか頭の中で、どこからか声が聞こえてきた。

「下のクラスに行きたいと思う気持ちは、今の“クラスでビリ”という立場がしんどいからだよね?」
「下のクラスでは『(ロシア語が)できる人枠』になるわけだけど、その安堵感がほしくて、このオンライン講座に申しこんだのかい?」

今より下のクラスへ行くのは、別に逃げではない。
現クラスに居続けたら、精神的にまいるのが目に見えている。
それをすべて踏まえたうえで、現クラスへの残留を決めた。
下のクラスには自分が欲しいものは無い気がしたから。
それだけである。


そうして、自分で選んだイバラの道であるが、予想通り、1か月のあいだ毎日へこんでいた。
授業中に口ごもるたび、頭の中で「年齢」「才能」「時間がない」といった、いいわけが泉のごとくわいた。
即座にいいわけを生成できるこの才能、今すぐ博〇堂から「いいわけライター」としてヘッドハンティングが来てもおかしくない。
体力的にきつかったが、仕事へ行くほうが気分はずっとずっと楽だった。
怒涛の一か月が終わった時、正直な気持ち「明日からは、あてられて人前でアファアファしなくていいんだ!!」という開放感でいっぱいだった。

ま、つまりは結果、火中へ飛び込んだのはいいけれど、みごとな大やけどというわけだ。
しかし、大やけどを負いながらも、得たものがある。
若きロシア語学習者たちの情熱だ。
彼ら彼女らはみな聡明かつ勤勉で、なによりもロシアを、ロシア語を、愛していた。
モニター越しとはいえ、この情熱を共有できたのは、講座を受けたかいがあったというものだ。
大やけどを負いながらも、ちゃんと栗を拾えたのである。

栗で拾ったからには、モンブランをキメなければならない。
そんな折に、エキナカモンブラン先行発売を耳にしたというわけだ。
大好きなシャンドワゾーのモンブランは、大やけどの身にとろけるほど甘美と滋養をもたらしてくれた。

ごちそうさま。
また新しいスタート地点へ立つことにする。

やけどが癒えるころには、自分は、また凝りもせず火中に栗を拾いに行ってしまうだろう。
そんな忘れっぽさと愚かさが、わたくしの良いところなのだ。

Век живи-век учись.
生きている限り学べ。
ロシアの格言である。

*1:~10/15まで

*2:オンラインだからかもしれない

*3:夏期講座とかならあるにはあるが、講義を受けたことはない