執念のフレジェ職人

「ケーキって、すごく美味しいのに、なんで食べたらなくなっちゃうんだろう。」
ケーキ好きたちは、食べ終わったお皿の前で、途方に暮れる。
ケーキに自己増殖細胞が存在し、残ったひとかけらより元通りに復元したら、それは幸せだが(って、バイバイン*1か!)、そんな細胞が実在したらパティスリーは商売あがったりだ。

当方も、ケーキを購入するたび途方に暮れている。
我が腹中にケーキが収まった幸福は計り知れないが、目の前から消えるというのが、さみしくて仕方ない。
写真に収め、その御姿を後日眺めるという悦びもあるが、立体ではない。
なんとかケーキを残せないか。
そう考えた、わたくしは、粘土をこね始めた。

読んでいる人は、少年マガジンの大ゴマに出てくる「!?」状態であろう。
「粘土ではなく小麦粉の間違いではないか?」と思われたかもしれない。
フェイクスイーツというものをご存じだろうか。
粘度で、本物そっくりのスイーツ作品を作るというものだ。
作った粘土のスイーツは、そのまま飾るだけではなくキーホルダーやアクセサリーにしたりもする。
講座などや即売会などもあり、一つのジャンルとして確立されているのだ。

粘度で大好きなフレジェを再現し、飾ればいいじゃない!
アントワネット先輩の「パンがだめならケーキ理論」に則り、「ケーキがだめなら粘度理論」となったのだ。


浦和のユザワヤ*2で材料を購入し、ネットで公開している作り方を読みながら、独学フェイクスイーツ苦戦の日々が始まった。
いかんせん、不器用な身。
思ったようにいかないことばかり。

とにかく、苺はリアルに再現したい。
イチゴづくりに一日のほとんどを費やしていた。

イチゴ試作中。

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フレジェ製作に入る前、ベリーのタルトを作り、リアルさを検証するの巻。
イチゴタルト。(イチゴをを様々な形のカットし観察)

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イチゴタルト(改)。ブルーベリーも作成してみた。
ブルーベリーが乗るとリアルさが増す。

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しこたま粘土でイチゴを作り、ある程度納得したのち、フレジェ用のビスキュイ制作に入った。
ビスキュイ生地も、気泡をリアルに再現したくて、小麦で作られた粘土を購入。
重層を混ぜてレンジでチンしたり、試作を重ねた。
ナパージュは固まると透明になる接着剤にプラモデルの塗料を混ぜ、艶と透明感を出した。

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大好きなリョーコのビスキュイを参考にしたので、黄色みが強い。


フレジェの美しさといえば、赤いナパージュともう一つ、ムースリーヌからのぞく、イチゴの断面。
イチゴのケーキを購入しては、観察、断面を模写。(もちろんケーキは、そのあと美味しくいただきました)

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写真だと細かいところがつぶれているが、超細筆で断面を描いてます。


イチゴは熟れたものとなると、中央にパカっと空洞ができたりする。そこもおさえた。(モデルのイチゴは「あまおう」)

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パカっとわれた空洞部分はこだわりましたよ、ええ。



すべでのパーツがある程度完成し、組み合わせたものがこちら。

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※組み立て式です。



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引きのショット。ビスキュイの気泡が見えないですね。


ムースリーヌ部分に納得いかない。
もっとリアルにすべく、ムースリーヌ改善に取り掛かろうとした際、祖母が亡くなった。
とても忙しくなったので、製作はここで中断。
落ち着いたころには、職人熱が冷めたのか、粘土スイーツを作らなくなってしまった。
ちなみに、この写真前まで、いくつも失敗作がある。

今思うと、部屋にこもり、イチゴやケーキの見た目を観察しては、毎日粘土を練り練り。
「おかしかった」としか言いようがない。
お菓子だけにか?
つまらぬ駄洒落である。
一つ言えることは、そこにケーキへの愛があったことだけは確かである。

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いとをかし。





 

*1:ドラえもんひみつ道具

*2:ハンドメイド製品はここでそろう。